詩と詩人

GLOSSARY

逆説(Paradox)

ぎゃくせつ

修辞・技法

一見両立しにくい言葉を結び、単純な二択では捉えられない真実を見せる表現。

逆説(Paradox)とは

ここで扱う逆説は、一見すると矛盾する言葉や状況を通じて、ものの見方を問い直す文学の表現です。「本当に両立しないのか」「何が矛盾して見えるのか」を、詩の前後から確かめていきます。

矛盾との違い

同じ意味・同じ条件で「Aである」と「Aではない」を同時に述べれば、論理的な矛盾になります。文学の逆説では、時間や立場、感情の違いを読むと、一見矛盾する表現に意味が見えてくることがあります。「この文は偽である」のような論理学のパラドックスとも、ここでは区別しておきましょう。

歓びの内側にある憂鬱

ジョン・キーツ「Ode on Melancholy(憂鬱に寄せるオード)」より

Ode on Melancholy

John Keats

Ay, in the very temple of Delight

Veil'd Melancholy has her sovran shrine,

日本語訳(当サイト)

日本語訳:筆者

そう、歓びの神殿の、まさにその内に

ヴェールをまとった憂鬱が、その至高の祭壇をもつ。

歓びの神殿の中に、憂鬱の祭壇がある。反対に見える二つの感情が、一つの場所に置かれています。この連の冒頭には「いつか死ぬ美」や別れを告げる歓びも登場します。美しいものを味わうほど、それが過ぎ去ることも感じてしまう。そう読むと、歓びの内側に憂鬱があるという表現が伝わってきます。

似た用語に、反対の意味をもつ語を短く組み合わせる撞着語法(oxymoron)があります。逆説は、ここで見たように場面や考えの関係としても表れます。読むときは対立する言葉を見つけて、前後の詩行がその関係をどう支えるか確かめてみてください。

この詩の背景や、キーツのほかの作品は「ジョン・キーツの紹介」で読めます。